待ち合わせ場所は渋谷にあるフレンチレストラン。昨夜、水城さんから電話がきてまずはそこでランチをしよう、ということになった。

優香ってば、人の気も知らないで……。

『恋人の振りして、なんて言って初めからそのつもりだったんでしょ!?』と優香に問い詰めてみたけれど、案の定、笑って誤魔化された。当の本人はというと、週末は彼氏の家でお泊りだそうだ。

週末の渋谷駅はいつも以上にごった返していた。人混みの苦手な私はすでに気疲れしながら目的地のレストランへ到着すると、その店の雰囲気にゴクッと息を呑んだ。

待ち合わせの店は駅から少し離れた高層ビルの十階にあり、天井には煌びやかなシャンデリアが吊されていて、コバルトブルーの絨毯が目を引いた。昼間からこんな高級そうな店に入っていいものかと気後れしてしまう。

「いらっしゃいませ」

店の前で戸惑っているところへ女性スタッフに声を掛けられて、待ち合わせの旨を伝えると「こちらへどうぞ」とにこやかなスマイルで奥へと案内された。

あぁ! 緊張する! どうしよう!

耳朶に手をやりかけて慌てて止める。ドクンドクンと心臓の鼓動が鼓膜にまで響いて、逃げ出したい衝動に駆られる。そして、案内された先に、水城さんと思われる男性が背を向けて座っているのが見えた。私は何度も深呼吸を繰り返して彼に歩み寄り、「お待たせしました」と声を掛けようとしたけれど……一瞬で言葉を失った。

え……? う、嘘。