良い大人になった息子の前で、妻を愛してるって言える男の人は、外国の人なら兎も角、この日本には、まず居ないだろう?
でも、ホントに居るんだ。
何年一緒にいても、妻を愛してると言える夫。

きっと、暖かい家族なんだろうなぁ…
私の知らない世界。
私の出会ったことのない家族。
こんな夫婦もいるのかと、羨ましく思う反面、正直信じられないとも思う。

でも、この人なら…
信じて良いのかもしれない。
ううん。信じたい。

あの日、彼が言ってくれた言葉。

『俺は、君を裏切らない。
一生君を愛し続けるって誓える。
だから、俺を信じろ!
一度だけで良い。この俺を信じろ!』

信じろと言ってくれた時の彼の微笑みは、今も覚えてる。
きっと、あの微笑みが私は欲しかったんだ…

愛してると言った時の暖かい微笑み。
愛してると言った時に真っ直ぐ向けられる瞳。

両親から向けられなくなっていたモノ全てを、彼は私へ向けてくれた。
私は、いつのまにか母の呪縛から解き放たれていたんだ。

「俺はそんな恥ずかしい親父の息子だ。
だから俺を信じてくれ。
真美を一生愛してやるって約束する。
あの世に行っても、愛してやる。
だから一緒に幸せになろう?」

彼が言う、恥ずかしい男(父親)の息子であるこの人を信じ愛してみよう。
ううん。もう私は彼を間違いなく愛してる。
だからこそ、婚姻届にサインした。
もう、なんの迷いもない。

「一生って約束したんだから、愛せなくなったその時は、私を殺して?
そしたら、あなたは約束を破る事にならないでしょ?」と私は彼へ言ってやる。
そして、ギョッとする彼の唇へキスをした。

そのキスが合図だったかの様に、彼は私を抱き抱えあげ、二階へと上がって行く。
そして私のベットへと下ろし、洋服へ手を掛けた。

「優しくするから良い?」

頷く私へ何度も愛してると言い、優しいキスを落としながら、一枚一枚脱がせて行く。

わたし…とうとう…
でも、後悔は無い。

彼は私の父とは違う。
きっと約束を守ってくれる。
彼は結婚という名の契約を、砂の城になんかにしない。
私も、砂の城なんて作りはしない。