「ひっ⁉︎」


カードを放り投げ立ち上がった拍子に、椅子が音を立てて後ろに倒れた。


みんなが一斉に振り返る。


ひそひそと耳打ちする声が『ひとごろし』と言っているようで、私はたまらず教室から飛び出した。


すぐ隣のクラスに駆け込む。


舞香がだめなら、達実でもいい。


同じ秘密を分かち合った、大切なひと。


私を守ってくれた、最愛のひとならきっと、守り抜いてくれるはず__。


「向井なら保健室に行ったな、気分が悪いとか」


達実と仲がいい男子に教えてもらい、私は保健室に向かう、その足が止まった。


そして近くの女子に尋ねる。


「えっ、明美?そういえば、保健室に行ったみたい」


最後まで聞かないうちに、私は廊下に飛び出していた。


さっきまでの恐怖は、もうなくなっている。


震え上がるくらいの怖さに取って代わったのは、怒りだ。


激しい怒りが体を渦巻き、私を突き動かしていた。


私がこんなにも追い詰められているというのに、2人で保健室で__なにをしている?とっておきの秘密を共有したのに、私を裏切るなんて、


絶対に許さない。


絶対に!


保健室のドアを開けると、ベッドを囲むようにカーテンが閉まっていた。


でも気配がする。


息を押し殺している、2人の気配が。


達実と明美が抱き合っているに違いない!


つかつかと歩み寄って、私はカーテンを思い切り引いた__。