「あんな不良にまで色目使うなよ」


吐き捨てるようにそう言って、父親はリビングへと姿を消した。

怒りとか悲しみなんて、今更湧いてこない。今私にあるのは、憐れみと感心だけだ。自身のあずかり知らぬところで“青二才”だとか“不良”なんて言われて、それでもあの髪でこの町に降り立つことを選んだ彼への。


今日はきっと、町中が彼の話題で持ち切りだろう。好評も悪評も全てを手中に収めて、彼は一体どんな気持ちなんだろう?

そこまで考えて、考えることを止めた。私には関係のないことだと思い返して。


まぁでも、この町の息苦しさに折れるのが先か自分を貫き通すのか、それは少し、気になるかもしれない。