良かった。
幸い、淳也くんを学校が終わった後、すぐに廊下で見つけることが出来た。



「淳也、くん」



声が細くて、聞こえていない。



「淳也くん、待って! お願いだから!」



わたしは、彼の元へ走り、腕を掴んだ。彼は、わたしの名前を言わない。



「わたし、やっと気づくことできたの! わたし、前より今の方がずっと心が軽いなって思ってた」



涙が出そう。声を出しづらい。
いや、負けるな。
わたしは、必死に叫んだ。



「いつもより心が軽いのは、誰なのかなって思ってた! 気づく事、出来たよ!」



ほろりとこぼれ落ちる涙。
滲んだ視界。



「わたしの心を軽くしてくれたのは、淳也くんだよ!」



視界は滲んでいるけれど、今、彼の表情が分かった。



「だから……。だから、わたしと、あなたが出会ったこと……。無かったことにしないでっ」



「真子ちゃん……」



彼は、わたしを忘れたことにしていない。
ちゃんと呼んでくれた。
真子ちゃん。



「真子ちゃんっ。ごめん! 真子ちゃんにこれ以上辛い思いさせないようにしたけど、結局辛い思いさせて、本当にごめん!」



わたしは、淳也くんの胸ですすり泣いた。