「楓ちゃん、竜王の番は他の番とは違う。竜王とその番は特別な役割があるんだ。大事なことだから今、教えておくね」

ラウル様はちらりとクリフ様を見てから私に向かうとクリフ様が顎に手をやりながら困ったような顔をした。

「特別な意味ですか」

「そう、竜王の番は他の番たちとは違うんだ。
彼女は竜王の妻である王妃になるのだからね。王妃は権力を得ると同時に竜王と同じく国を守るという使命が生まれるんだ。その代わり国の者も王妃を大事に思い、全力で支えてくれるだろう」

”王妃”

その言葉の重みに顔がひきつるのを感じる。
隣からはそんな私を気遣うようなクリフ様の視線を感じるけれど彼の顔を見る勇気はない。

「番はこの世に1人なんですか?」

「二人いるとは聞いたことがありません」
ヘストンさんが申し訳なさそうに口を開いた。

「ーーー私は本当にクリフォード様の番なんでしょうか」

私の問いかけにクリフ様の顔が曇った。

「私の番は楓で間違いはない。鱗が反応したというだけではない。楓も感じたはずだ、私たちが初めて触れ合った時に感じた衝撃を」

そう、私の手にクリフ様の唇が触れた時、確かに電気が走ったような何かを感じた。
電気だけではない、甘い疼きも。

「楓、昨日も言ったがまずは私のことを知って欲しい。その後の生活については無理強いするつもりはない。嫌だと言うのならこの国を離れることも許そう。だが、忘れないで欲しい。楓は私のたった一人の番なんだ」

ーーークリフ様の切羽詰まった真剣な表情に私は戸惑いながらも黙って俯くしかなかった。