「うぅ……」
寝間着のロングワンピースが膝上まで捲れ、いつもはスカートとタイツで隠れている白い足がザックの目に飛び込んできた。
その瞬間、ザックの胸の内で心臓が跳ねて、アーシェリアスと出会った日に生まれ、見ないようにしていた気持ちがむくりと頭をもたげる。
けれど、自分が誰かを思い出し、またしまい込むと無理矢理気持ちを切り替えた。
「おい、起きろ」
「……寒い……なにごと……」
春はもうすぐそこという気候ではあるが、朝晩はまだ少し冷え込むことが多い。
本日、窓の外に広がる空は青いけれど、低血圧のアーシェリアスにはその陽の光も今はまだ歓迎はできない状況だ。
しかしながら、朧げに聞こえた声が聞き覚えのある声だったので、それが誰であるかを確認しようと瞼を開く。
だが目の前には誰の姿も見えない。
もしかしたら寝ぼけていたのかもと、とりあえず急になくなった布団を探そうと上体を起こした時だ。
「やっと起きたか」
また声が聞こえた。
しかも今度ははっきりと。
その上、ノアではなく男の声だったことで、アーシェリアスの意識は一気に覚醒する。