詩穂は情けない顔で蓮斗を見た。詩穂の表情を見て、蓮斗が噴き出し、詩穂の髪をくしゃくしゃと撫でる。

「あーあ、小牧には適わないな。もう俺のそばにいてくれたらそれでいいよ」

 その言葉はきっと彼なりの優しさだ。一線を越えなければ、この心地いい関係を守れるのだ。蓮斗は大切な人、ソムニウムに居場所をくれた人。弘哉のときと同じ過ちを犯してはいけない。

「わかった。今後ともよろしくね」

 詩穂は精いっぱい友達の笑顔を作って答えた。