照れくさそうにそう言った高橋に、「健闘を祈る」なんて言いながら、もう一度応援席を見た。


高橋の好きな相手は年上。

ということは、相手は佐倉じゃない。

部活関係だろうか。


借り物で恋愛系のカードを引いたら、全校生徒の前で高橋は告白するつもりだ。

それを目の当たりにして、佐倉はどう思うだろう。


「そりゃ傷つくよな……」


佐倉の泣き顔が頭に浮かぶ。


佐倉が失恋すれば、俺にもチャンスがくるのかもしれない。

でも、それを喜ぶ気にはなれなかった。


あいつの傷つく顔は見たくない。

あいつの笑顔を守ってやりたい。


あいつを笑顔にできるのが、高橋じゃなく俺だったらよかったのに。



でも仕方ない。

佐倉が好きなのは、俺じゃないんだ。


俺は俺のできる方法で、佐倉を守るしかない。

でもその佐倉には避けられているわけで。


俺にも恋愛系のカードが来たら、告白してやろうか。


投げやりにそんなことを考えた自分にまた、ため息をつくのだった。