開口一番失礼なセリフだ。こちらも軽口で応酬する。

「そっちこそ本当はさっき起きたばかりじゃないの?」
『そんなわけないだろ。ところで、今日、なにか予定ある?』
「んー、特にはないけど」
『だったら、一緒に映画でも観に行かないか?』

 映画など、久しく観に行っていない。行きたい気もするけど、目が腫れているしな~などと思っていると、蓮斗の声が聞こえてくる。

『大学時代、おまえが好きだって言ってたハリウッド俳優の新作映画が公開中だぞ』

 蓮斗が挙げた俳優の名前を聞いて、詩穂は「ホントっ!?」と明るい声を上げた。

『おいおい……えらい変わりようだな……』

 蓮斗の呆れた声が返ってきた。

「だって、ここしばらく映画を観る余裕なんてなかったんだもん」

 金銭的に、というより精神的にという意味でだが。

『だったら、なおのこといい気分転換になるんじゃないか? まだそんなに寒くないし、家のこもってるよりずっといい』

 その言葉を聞いて、笑みが込み上げてきた。もしかして彼は私のことを気遣ってくれたのだろうか。

「じゃ、行こうかな。何時に待ち合わせる?」
『今すぐはどうだ?』
「ええええええっ!」