「でも……叶わないなら、いっそしちゃうのもアリか?」


だってこいつ、アレだろ?

やっぱり高橋のことが好きなんだよな?


何かにつけて高橋は特別だと言ってるし、俺を含めた他の男への態度と、高橋に対する態度があきらかにちがう。


恋を自覚すると同時に失恋って、笑えねー。

あの時痴漢から助けたのは、高橋じゃなく俺だって言うか?


いや、いまさらだ。

それにわざわざ自分から言うなんて、かっこ悪くてできるか。


布団から佐倉の手を出して、優しく握る。

まあ、佐倉が誰を好きだろうと、俺以外の奴を想っていようと、こいつを守りたいという気持ちに変わりはない。



「佐倉……俺を見ろよ」



俺の情けない呟きは、誰にも届くことなくこぼれて消えた。