「お前、歴史は得意か」

「得意です。てか、大好き!」

私はにこりと笑って男の子を見た。男の子の表情は何も変わらない。

「……なら、帰れるか」

「てか!私に全て話して!」

私は何かぶつぶつ言っている男の子に問いかけた。

「僕から説明します」

天くんが私に近寄ってきた。私は天くんを見つめる。

「義昭様は、色葉様と同じように江戸時代にタイムスリップしてしまったんです。義昭様と色葉様の体は現代にあり、今の義昭様と色葉様は幽霊状態にあります。江戸時代の人や妖怪には義昭様や色葉様の姿は見えます」

「ええ!?よ、妖怪!?」

「あ、はい…江戸時代は、人間と妖怪が共存していた時代なんで」

「それは知らなかった…」

私は深いため息をつきながら言った。妖怪など架空の存在でしか無いと思っていたから。

「それで、義昭様と色葉様が元の時代に帰れる方法は1つ。1つの時代につき1人1つの句を詠むことです。縄文時代から平成時代までの全ての時代を…ね?安心してください。義昭様は、明治時代から昭和時代までは句を詠んでいます」

天くんは、そう言って不敵な笑みを浮かべた。

「……で?私を連れて来た意味って?」

私は天くんに問いかける。天くんは悪魔のような笑みで「義昭様は歴史が苦手なんです。僕が色葉様のことを知っている理由は、僕は色葉様の父と知り合いだったので」と言った。

「天は黙っておけ!!」

少し男の子は顔を赤くしながら言う。私は「その句って、私とこの子、共同で1つ?」と天くんに問いかけた。

「はい!1句が出来る度に、この色紙を渡しますのでこちらに2人の名前を書いてもらえれば…以前、義昭様が詠んだ句に色葉様の名前を追加しておきますのでご安心ください」

天くんは満面の笑みを浮かべたままそう言った。

「…そっか。私は、源 色葉。あんたは?」

私が自己紹介すると、男の子は「……松平(まつだいら) 義昭だ」と冷めた目で私を見ながら言った。

……義昭くん…と呼びたくないから義昭で。