「神楽ちゃん、暇?」
幹部室のソファーに座った私に声を掛けてきたのは光。
直ぐ側に立ち、覗き込むようにして私の顔を見てる。
「うん、暇だよ」
霧生は、仁さんに呼ばれて彼の会社を訪れてるから留守だし。
「じゃあ、繁華街に行こうよ」
首を傾け愛らしく微笑む光。
「繁華街?」
「そ。霧生の誕生日プレゼント、見に行こ。神楽ちゃんも、まだ買ってないでしょ?」
「うん」
「僕もまだなんだぁ。だから、一緒に探そうよ」
天の助けだ! 光にアドバイスしてもらえるかも。

「探す!」
勢い良くたちあがったら、光が慌てて仰け反った。
「うわっ、ビックリしたぁ」
「ご、ごめん」
「ううん。じゃあ、行こ」
ハニかんで手を差し出した光。
「うん」
光の手を掴んで歩き出すと、それまでソファーに寝転がって漫画本を読んでたコウが声を掛けてきた。
「おいおい、2人きりで出掛けるとか、霧生の奴がうるせぇぞ?」
それは一理あるかも。
「だったら、コウも一緒に行く?」
「あ···おう、いいぞ」
コウは頷いて本を閉じるとテーブルに置いて立ち上がる。

「総長、出掛けてくるね。霧生が帰ってきたら言っといてね」
「おう、分かった。2人から離れんじゃないぞ。知らない奴に声をかけられてもついてくなよ」
「は〜い」
お父さんみたいな事を言い出した総長に、苦笑いを浮かべ頷いた。
「お前らも、神楽から目を離すなよ」
いや、だから、私は子供じゃないからね。
「わーってるって」
ガジガジと自分の後頭部をかきながら返事するコウ。
「分かってるよぉ〜」
光はにっこり微笑んだ。
「なら、行ってよし」
さっさと行けとばかりに、シッシと手を振る総長に別れを告げ、私達は部屋を出た。


「総長って、やっぱ神楽の親父っぽいよなぁ」
ニシシと笑うコウ。
「過保護っぷりが半端ないよねぇ」
ウンウンと頷く光。
「私、小さな子供じゃないんだけどなぁ」
唇を尖らせた私にコウが言う。
「神楽はサイズが小せえからな」
おい、私を真上から見下ろすんじゃない。
「神楽ちゃんミニマムだからねぇ」 
フフフと笑った光まで、見下ろしてくる。
く、くそぉ〜。
ミニマムって何よ、ミニマムって。
光だって小さい癖に、と思ったけど、よく考えると170センチはあるんだよぇ。
周りが180センチ超えのビックサイズかゴロゴロいるから、小さく見えるけどさぁ。

いいなぁ、身長。
牛乳飲んだら、伸びないかなぁ。