「あの矢、絶対に的中する」


的中――的にあたると、そう確信させる絶対的な安心感が彼の弓道からは感じられた。

長い静寂のあと、『離(はな)れ』と呼ばれる弓道の動作に彼は移った。

すべてを解き放つように、矢が放たれる。

その瞬間、弓道場を囲むように生えていた燃えるように赤い紅葉の葉が矢道に吹き荒れる。

その紅葉の中を突き進む矢は的に吸い込まれるように、パンッと気持ちのいい音を響かせて的中した。


「あっ……」


やっぱり、あたった!


私は爆発しそうなほどの気持ちの高ぶりを感じながら、ぎゅっと胸の辺りの服を握りしめる。


すごい……すごい、すごいっ。

こんなに美しくて、正確で、力強い弓道をする人がいるんだ。


目を惹く鮮やかな紅葉の風の中でも、彼の存在はひときわ輝いて見える。

彼の周りの空気が澄んでいるかのように、私の瞳には映った。

色白でどこか儚さがあるように思えて、きりっとした目鼻立ちが猛々しい男らしさを感じさせる。

彼の内から滲み出る意思の強さに、私はすっかり心を奪われていた。