あれは、中学三年生の秋のこと。
お母さんと高校見学に来ていた私――六実楓(むつみ かえで)は、弓道場に向かっていた。
「楓、見学するのはこの高校が最後だけど、ちゃんと決められそうなの?」
隣を歩くお母さんは、私のことなのに、私以上に心配そうな顔で尋ねてくる。
今年の五月から、いくつもの高校を見学してきたのだけれど、これといって惹かれる学校はなかった。
とはいえ、二ヶ月後には願書を提出しなければいけないため、これが最後の高校見学と決めていた。
「……もう、弓道部があるところなら、どこでもいいかな」
私は中学から弓道をやっている。
もちろん高校でも続けるつもりなので、弓道部の ある学校が絶対条件だった。
「もう、そんな適当に決めて……って、あっ」
話の途中で、お母さんは立ち止まる。
それから慌ただしくカバンの中を漁ると、眉をハの字にして私を見た。
お母さんと高校見学に来ていた私――六実楓(むつみ かえで)は、弓道場に向かっていた。
「楓、見学するのはこの高校が最後だけど、ちゃんと決められそうなの?」
隣を歩くお母さんは、私のことなのに、私以上に心配そうな顔で尋ねてくる。
今年の五月から、いくつもの高校を見学してきたのだけれど、これといって惹かれる学校はなかった。
とはいえ、二ヶ月後には願書を提出しなければいけないため、これが最後の高校見学と決めていた。
「……もう、弓道部があるところなら、どこでもいいかな」
私は中学から弓道をやっている。
もちろん高校でも続けるつもりなので、弓道部の ある学校が絶対条件だった。
「もう、そんな適当に決めて……って、あっ」
話の途中で、お母さんは立ち止まる。
それから慌ただしくカバンの中を漁ると、眉をハの字にして私を見た。