「だって高橋くんは他の男子とはちがうもん。前に痴漢から助けてくれたし、がさつじゃないし、下心とかそういうの、全然ない人でしょ?」



痴漢から助けたって……



それ、俺じゃね?



前に佐倉が電車の中で痴漢に遭っているのを目撃して、割って入ったことはまだ記憶に新しい。

いつも自分の身を挺して小柄なダチを守るように立っている佐倉のことは、実は前から気になっていたから、様子がおかしいことにはすぐに気付いた。


俺は不愛想だし、見た目も恐いとよく言われるから、その後のことを全部高橋に任せたんだよな。

つまり佐倉は勘ちがいし続けているわけか。


別にいいけど……なんとなく、面白くない。

佐倉になんとなく好かれていない自覚があるから尚更。


っていうか、痴漢から助けてもらったくらいで、信頼しすぎだろ。

どうも佐倉は背が高くて勝気な目や性格をしているくせに、隙が多い。


おまけに誰かにあとをつけられたこともあると言い出すから、ますます心配になった。

これから1ヶ月一緒に住むわけだし……俺が気を付けて見てやらないと。


俺に妙な庇護欲を芽生えさせた佐倉を見下ろし、内心ため息をつくのだった。