「ええ、待って、これは予想外すぎる……」
「何、俺が覚えてないとでも思った?」
「あの俺様郁也がこんなことするなんて夢にも思いませんでした」
「正直すぎだろ」
「だって……嬉しい……」
そっと袋から取り出して、華奢なチェーンを手につけてみる。キラキラと光るそのブレスレットはすごくかわいい。
「俺のもんっていう目印な」
「あれ、お花だと思ってたけど……」
シルバーのチェーンに花の装飾が施されている中、真ん中に真っ赤な林檎が一つ。
「郁也! これわざとでしょ」
「はあ?」
「林檎のデザインのやつ……選んでくれたの?」
「……似合ってる」
ああもう、すぐそうやって話ずらすんだから。
「郁也ってもしかしなくても私のこと大好きなの?」
「調子のんな」
いやこれは調子に乗らせてよ、オオカミくん。
「なあ林檎」
「うん?」
「今度の土曜日ひま?」
「土曜日?うーんと、」
頭の中をこれからの予定がくるくるまわる。舞との約束は、確か来週だ。部活にも所属していない私に予定は一切ない。
「うん、大丈夫だよ!」
「じゃあその日デートな」
驚いて顔を上げると、そう言った郁也の顔が真っ赤だから、こっちまで恥ずかしくなる。
「郁也顔赤いよ?」
「うるせえな、くそ、自分から誘ったことなんかねえんだよコッチは」
郁也がそう言いながらも、隣に座ってる私の手を握る。ずるいなあ本当に、私だって初めてなんだからね。
「ありがと、郁也」
顔は伏せて。郁也は恥ずかしさを隠すように空を見上げている。
けど確実に、二人の体温はとても熱かった。土曜日が待ち遠しくてしょうがないよ、バカ。