そんな雄也を、俺は軽くあしらった。大体、雄也と林檎が同じ委員会だってこと自体今日知ったというのに。

雄也はあの時、何を思って俺に会いにやってきたんだよ。


「所詮さ、また遊びだと思ったんだよ」

「……」

「『おまえ、今回は本気ってこと?』って聞いた俺に、あの日、郁也は何も答えなかったな」


思い出す、その時のこと。


「本気なんだと思ったよ」


雄也はきっと、林檎への想いに気づいて今日話しかけたんだろう。

俺への、宣戦布告として。


「気づいちゃったからもう引けねえよ、郁也」

「……ああ」

「強気でいられんのも今のうち」


わかってるよそんなもん、つうか、恋とかしたのも彼女ができたのも初めてなのに追い討ちかけんなよ、クソ。


「じゃあ、俺はライバル宣言したから遠慮なくいくよ」

「……」


パタリと扉を閉めて雄也が出て行った後、柄にもなく深くため息をつく。

あーあ、俺ダッセェな。内心めちゃくちゃ焦ってる、バカみてえだ。


……でも、とられたくない、林檎のこと。


初めて本気で手に入れたいと思った女の子のこと、ぜってえ、手離したくない。