「何言ってんの、お前」



雄也の言葉の後、少しの沈黙を破り、口を開いたのは俺だった。



「否定してほしい?」



はは、と乾いた笑いを見せる。いや、冗談だよな、さすがに。

思いとは裏腹に、俺は首を横に振ることも縦に振ることもできなかった。


「……俺、しねえよ、否定」


雄也はうつむきながらそうハッキリと言った。初めてだ、コイツが俺にこんな態度を取るの。

雄也は確実に、俺に宣戦布告してるーー。


「……いつからだよ」


雄也は答えない。委員会が同じだとは言ってたけど、今日初めて喋ったんじゃねえのかよ。意味がわかんねえ。


「入学式から」

「はあ? クラスも違うのに?」


入学式。それは、俺と林檎が出会った日でもある。


「俺の一目惚れだよ、かっこわりいけど」

「あの日、俺も遅刻しててさ。急いでて、同じように遅刻してる子見つけたんだよ。それが林檎だった」

「はあ? ……お前そんだけで?」

「その時は横顔しか見えなくて、なんとなく印象に残っててさ。委員会同じになって、あの時の子だって気がついた」

「……」



「気付いた時は運命かと思ったよ。ガラでもないだろ? そっからなんとなくいつも目で追っちゃってさ。今日話してみて確信したよ。今思えば一目惚れだったんだろうけどさ」


はは、と軽く薄笑いした雄也の声。俺はそれを聞くことしかできない。


「郁也がさ、彼女と付き合ってるって聞いた時、俺、おまえに会いに来たじゃん?」


記憶を巡らせる。

そうだ、確か。あれは、俺が林檎に無理矢理キスした直後。雄也が部屋にあがりこんできて。

第一声は、『なあ、俺、どーしたらいい?』だったんだ。