大学卒業間近、何年振りかに家族揃って、食事をする事になった。
家族揃っての食事と言っても、特に話す事も無く、ただ、運ばれて来る料理を三人共が黙々と食べてるだけだった。
料理人が、心を込めて作ったであろう料理も、全く味わう事なく、何を食べても、全て無味だった。
こんな事なら、来なきゃ良かったとさえ私は思っていた。

「詩織 お母さん逹離婚する事に決めたから!」

「そう」
やっとするんだ?

母はニューヨーク支社へ転勤が決まり、父は付き合っていた女(ひと)に子供が出来たとかで、その女と再婚し、その女の実家に婿養子として入ると言う。

「真美、父さんは今でも、真美を愛してる。それだけは、忘れないでくれ?」

父は持っていたフォークとナイフを置き、私へと手を伸ばそうとした。
だが、私はそんな父へ冷たい視線を送り、触れられまいと、手をテーブルの下へと下ろした。

愛してる…?
愛人と、愛人との子供の次にでしょ?
いや、それもどうだ解らない。
どんな理由が合ったにしても、愛人を作った時点で、あなたは家族を捨てた。

そんなうわべだけの言葉なんて要らない。
いっそう、愛せなくなったって言われた方が、どんなに気が楽か…

そして黙々と食事をする母からは
「真美はどうする?」と聞かれた。

どうするって…
ニューヨークまで母親についていく歳でもないし、かと言って、家族を捨てたこの人の側には居たくない。
私とそんなに歳の変わらない人を母と呼び家族になるのは絶対嫌だ。
希望していた会社に入社する事が決まってるに…
冗談じゃない。

「私、もう未成年じゃないよ? 親としての義務も終わってるんだから、各々生きれば良いんじゃない?
就職決まってるし、私は一人で生きて行けるから!
私の事は心配しないで?」

心配しないでと言うより、寧ろ、これ以上私の人生に関わらないで欲しい。