「神楽、可愛い格好してんじゃねぇか」
霧生に手を引かれ、一階に降りてきた私にフロアーにいたコウがニタニタしながら近寄ってきた。
「似合ってる?」
と聞けば、
「孫にも衣装な」
とさらに笑われる。
ムムッ···相変わらずムカつく。
「神楽ちゃん、霧生の実家に行くんでしょう?」
アヒル口で拗ねた様に言うのは光。
「う、うん」
そうなんだよね。
私は霧生の実家に招かれたんだよ。
親公認で付き合っていた舞美さんが逮捕された事で、舞美さんの両親が彼女の霧生に対しての所業を知る所となり、霧生の実家に謝りに来た。 
そこから、霧生と父親の確執が発覚し、彼の家は家族会議と相成った。
いつもお淑やかな霧生のお母さんが泣きながら、お父さんを叱りつけ、霧生達は和解する事になったらしい。
その会議の中で、霧生が私の事をポロリと漏らしてしまい、ぜひ会いたいというお母さんたっての希望で私が招待される事になっちゃったの。
何を着ていってたらいいのかと相談した私に、霧生が「何でもいい」と言って「じゃあ、行かない」と拗ねたのは記憶に新しい。
次の日に、霧生が私の服を一式買って来たのには、流石に驚いたけどね。

「あ〜親にまで紹介されちゃったら、神楽ちゃんもう逃げられないねぇ」
困ったね、と笑った光。
「紹介しなくても、逃がすわけねぇだろうが」
霧生はドスの聞いた声でそう言い光を睨み付ける。
「おぉ、怖い怖い。僕、幹部室にい〜こう」
光は巫山戯た様に自分を抱きしめ去っていく。
「あいつ、本気でシメてやろうか」
いやいや、止めたげて。
「神楽、霧生に飽きたら俺がいるからな。まぁ、気を付けて行ってこい」
じゃあな、と手を振って立ち去っていくコウ。
コウ、爆弾落としていくの止めてぇ。
「···チッ、どいつもこいつもうぜぇ」
ほら、霧生が不機嫌になっちゃったじゃん。
でもさ···私まだ、霧生に付き合おうとか言われてないんだけど···。
みんなは、私と霧生が付き合ってる気で居るんだけどね。
私にしてみれば、今の状況は不安で仕方ないよ。