「シュタイルで食料調達したら、また作ってあげるから」

「昨日のあずきバージョンがまた食べたい」

「あずきかぁ。シュタイルに売ってればだね」


昨日ザックが食べたあずきのおやきは、シーゾーがくれたあずき缶を使い、ホロ馬車に積んである母の調理道具で作ったものだった。

ファーレンではスープやサラダなどの料理で小豆を使うこともあり比較的入手はしやすい。

ただ、甘く煮ることはあまりないので、程よく甘いあずきのおやきを口にしたザックは美味いと何度も言いながら平らげた。


(冷凍庫があれば作り置きしておけるんだけどな)


大陸の北、ネレーゲン公国のような雪国ならば氷の冷凍庫で保存もできるだろうが、ファーレンは冬でも気温がマイナスになることはあまりない。

ルーヴ家の屋敷では贅沢にも氷を仕入れて食料を冷やしていたけれど、通常は雪解けの季節である今の時期くらいから、肉などは燻製や塩漬けして保存するのが主流だ。


(食料調達も、その気候に合った保存を考えてしないとダメだよね)


アーシェリアスが季節と食料のバランスを思案しているうちに、ザックが運転するホロ馬車はシュタイルと書かれた案内板近くの厩舎に止められた。