「おーい! 皆、固まってないで返事は? 神楽ちゃんが困ってるでしょ」
光の声が響いた瞬間、割れるような歓声が上がった。
「「「「「よろしく!」」」」」
一斉にかけられる声。
「美少女キター!」
「女の子だー!」
「可愛いぃ」
「仲良くしような」
「うぉー!」
最後の雄叫びの意味が分からなかったけど、歓迎はしてくれたみたいで、ホッと胸を撫で下ろす。
顔を上げ、見下ろした一階は変なテンションが沸騰していた。
全部が全部じゃないけど、向けられる視線も友好的な物が殆どだし、ここでならやっていけるかもって思えた。
ホッとした瞬間に浮かんだ笑顔、それを見たヤンキーズ達が目をギラギラさせて更に沸騰した。
こ、怖いよ、別の意味で。

「さぁ、行こう。総長達を待たせ過ぎたら怒られるし」
「うん」
それは嫌だ。
あの強面の総長に怒られるのは、精神的に病みそうだ。
光に手を引かれ、再び動き出す。
今度はもう階段を降りる足は止まることは無かった。





「連れてきたよぉ〜!」
大きな声でそう言いながら、幹部室のドアを開けた光。
「おっせぇよ」
と言ったのは霧生で、
「ご苦労さん」
と言ったのは総長だ。
「お、おはようございます」
入り口で挨拶をすると、霧生も総長も挨拶を返してくれる。
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「あ、はい」
総長の問い掛けに頷いた。
「おはよ、神楽。こっち来いよ」
「···うん」
昨日と同じ場所に座る霧生が手招きをして、自分の隣をポンポンと叩いた。
「行こ」
顔を覗き込み手を引いくれる光。
光って弟キャラだなぁ、そりゃ私より身長は高いけど。
仕草や話し方見てると、こんな弟が居たらいいかも? と思ってしまう。

「はぁ? 手なんて繋いでんじゃねえよ」
私達の繋がれた手を見て、不機嫌さをあからさまに見せる霧生。
いやいや、急にどうしたよ。
「いいでしょ? 役得役得」
ニカッと笑って繋いだ手を持ち上げた光に、刺激しない方向でいって欲しいと願う。
「チッ···」
光を一瞥した霧生は乱暴に立ち上がると、足早にこちらまでやってきて光から私の手を奪い取った。
「え〜! 霧生、邪魔しないでよぉ」
ぷっくり頬を膨らませ抗議する光。
「うっせぇ、これは俺の子猫だ」
そう言って私を見下ろす熱の籠もった霧生の瞳にドキッとする。
な、なんなのよ、これ。
だいたいいつから、霧生のモノになったの言うんだろうか。
私は私のモノなんだからね。
そう思いながらも、熱を持った頬は中々冷めてくれなかった。