ケータイ小説 野いちご

闇の果ては光となりて

「それより、子猫ちゃんはなんて名前なの?」
のほほーんと言ってのけた光。
彼はマイペースなんだなぁ。
「あ、望月神楽。えっと、一応よろしく」
自己紹介されて名乗らないのはおかしいので、自己紹介してみた。
「神楽ちゃんね。うん、見た目に違わず名前まで可愛いね」
「・・・ありがとう」
顔も知らない亡くなった父親が唯一残してくれたのが、この名前。
それを褒められて、ちょっと嬉しくなった。
「あ〜笑ったら凄く可愛いねぇ」
さらりと褒めてくれた光は天然の女ったらしじゃないかと思う。

「お前って普通に笑えんだな」
「笑えるし。失礼な」
霧生と会ってから一度も笑っては無かったけどさ、笑えるつーの。
「神楽、お前、ここに住むだろ?」
「はぁ? どういう事」
「夜中に誰もいねぇ波止場なんかに居る理由なんて、家に居場所がねぇかのか、家出してきたのか、どっちかしかねぇだろ」
霧生に痛い所をつかれた。
「・・・」
なんて答えようかな。
「樹弥、いいだろ?」
何を勝手に話を勧めてるのよ。
「ああ。構わねぇぞ。部屋は余ってるし、小さい子猫が住み着くぐらいどうって事ない」
総長まで、子猫扱いしてきた。
それより、勝手に決めないでよ。
「あ、あの私・・・」
勇気を振り絞り出した声は、
「やったー! 神楽ちゃんと住めるんだね」
と言う光の明るい声にかき消された。
いや、待って、そうじゃない、そうじゃないんだよぉ。
俯き完全に項垂れた私を霧生達が、優しい目をして見つめていた事を私は知らない。

私の意思とは関係なく住む場所が決まった。
それでも、あの家に帰るよりはマシかも知れないと思ったのは、きっと間違いじゃない。



< 17/ 142 >