そこに挟んでおいた
客からのお小遣いと
銀行の通帳は無事だった。


「あの女も、
こっちには気が付かなかったわけね」


とは言ったって、
いつかは通帳の存在も気づかれ、
全て盗まれてしまう。

それを防ぐには、
私がこれを守り抜くほかない。

だけど、
その為だけに生きて、
あの女の為に働く

ということを考えると、
生きたいとは思えない。

私は通帳を開けた。

50万円という大金が、
残金の枠に記されている。


「コレを全部使いきって死ねば、
あの女の手に金は渡らない…」


私は立ち上がり、
カバンを肩にかけると、
部屋を出た。


階段を下り、まっすぐ玄関へ向かう。

一足スニーカーだけが
置かれた玄関の床にしゃがみ、

泥がこびりついて濡れた
スニーカーを履くと、
私はドアを開けた。