「やぁ。こんばんは、妃芽乃さん」



にこにこする八王子くんが今日は少しだけ怖いと思った。



背後ではガチャンと自動で鍵が閉まった音がする。私はカードキーを部屋の中に置いてきてしまっているから中に戻ることはもう不可能。




「スマホかして?夜瀬に電話するから」



…詩優に?



八王子くんは私の腕を引いてエレベーターに乗せる。




「…何が目的?」




「んー。海斗が夜瀬に用があるからその手伝いをしてるだけ」



…海斗さん……



私は抵抗しても無駄だと思い、スマホをポケットから出して八王子くんに渡した。




エレベーターを下りると、黒いワゴン車が止まっていてドアを開くと無理矢理押し込まれた。続いて八王子くんも乗り込むと、すぐに発車した。




「女!!女だっ!!!」


「環さん!!この女は犯してもいいんですか!?」




私の両腕を強く掴んでくる坊主の男2人。男ふたりは唾液がぽたぽたと垂れていて、まるで野生の獣。



…この2人は女に飢えているんだ……




「ダメだよ。まだ」




八王子くんは優しい口調でそう言う。"まだ"ということは後ではいいのかもしれない…