私だって、そのうちのひとりだ。


でも、私の場合は――
ううん、“私たち”の場合は、ほかの女の子とはちょっと違う意味で伊吹くんを見つめている。


「やっぱりさぁ、伊吹くんって桓武天皇に似てる~」
「いやいや、やっぱり白河天皇でしょ」
「でも安徳天皇も捨てがたい~っ」


放課後の美術室で行なわれているのは、美術部の部活動。
写真部から部費で購入した伊吹くんの写真を、机いっぱいに並べて。

そして平安時代を彩った天皇たちをモチーフにした乙女ゲーム『平安ララバイ』に出てくるキャラクターのイラストに身もだえる。


美術部に所属しているのは、全員で10人。
みんな、地味な女の子ばかりだ。

現実の世界で恋愛なんて、それこそ夢のまた夢。
そんな私たちだから、自分をこれでもかと甘やかしてくれるゲームの世界に夢中になる。


「ね、結衣は?伊吹くんは誰に似てると思う?」


友人の真由が私に問いかける。

私は断然、一条天皇押し。
文学や音楽に親しみ、温厚で勤勉な人だったという一条天皇は、伊吹くんのふんわりとした外見によく似合う。


「一条天皇♡♡♡」