そうして、訪れたスペインバルで美味しい料理とお酒を飲んだのは良かった。
そう、そこまでは問題なかった。
まさか、お酒を飲んだ彼女がここまで破壊的な可愛さになるとは……。

「土居しゃーん!おいしいれすねぇ!おしゃけもまらのめらすよ!」

グラスを掲げて、ご機嫌な彼女は相当お酒に弱かったらしい。
グラスいっぱいの弱めのカクテル一杯でこの状況だ。
今後、お酒はちょっとでジュースやお茶にしなければ。
いや、むしろ自分以外と飲みに行く時はお酒禁止で、迎えに行かねばならん! などと考えているとポスンと肩先に彼女が寄りかかってきた。

役得! お酒の力は偉大なり。
内心で喜びの涙を流していると、平野さんは言った。

「土居しゃんは人気者なんらよ? 私の同期やしぇんぱいみーんな、イケメンでステキ!っていってるんらよ?」

すっかり言葉がやや怪しくなって、体に力も入らなくなっている。
俺に寄りかかりつつも、笑いながらそのふにゃふにゃの可愛い言葉で喋る。
どうやら、ご機嫌なようだ。

「智恵はどう思ってるの? 俺を少しは気にしてる?」

ここは勢いで聞いてみると、智恵はニコッと笑って言った。

「いつも優しく助けてくれゆし、しゅてきだなと思うけろ。あたしとじゃ、合わにゃいと思ってりゅ! あたし、普通だから……」

そこまで言うと、彼女はすっかり夢の国に旅立ってしまった。
健やかな寝息が聞こえてくる。
ふにゃっと柔らかく微笑んでいる彼女の頬をつついて、一言。
「計算高くて、ずる賢いんだよ。大人はね……」

こうして、寝入ってしまった彼女をそっと抱えて、俺は自分の家に帰ったのだった。