「深月。
 お前の父親、すごいイケメンだな」

 深月は朝、支社長室でいきなり、陽太にそんなことを言われた。

「は? 何処で会いました?」
と訊き返す。

「昨日、おでん屋で。
 っていうか、いつもおでん屋で見てるおじさんだった。

 ……しかし、イケメンなんだが、筋肉が凄すぎて顔に目がいかないのはどうにかならないのか」

 ならないですね~と深月は苦笑いする。

「ああいう人なんで……」

「そういえば、本社から川久保常務が来るらしいな」
と嫌そうに陽太が言った。

「そうなんですよ。
 出張でこちらに来るついでに支社の視察に来られるとかで」
と深月が言うと、

「来なくていいんだがな」
と何処か遠くを見るような目をして、陽太は言う。