「いや、俺はそんな住所不定の輩《やから》に深月を渡すつもりはないね」

 深月の実の父、勝《まさる》はおでん屋で、深月の今の父、良彦《よしひこ》と呑んでいた。

「いや、陽太くん、船に住んでるわけじゃないから」

「なんだ、お前。
 やけに深月の彼氏の肩持つな。

 まあ、お前は腹痛めて深月を産んだわけじゃないしな」

「待て。
 お前も痛めてないだろ」

「ともかく、俺はそんなシシャチョーとか言うチャラチャラした偉そうな奴に深月を渡すつもりはないからなっ。

 男は身体使って働いてナンボだっ。

 なあ、兄ちゃん!」
と勝は横に居た、たまにおでん屋で一緒になる若いサラリーマンの肩を抱く。

 彼は、はあ、と困ったように相槌を打っていた。