「あ、もしもし育美ちゃん?」

『和真くんっ、どうしたのっ!?』

「予定が変更になってさ、俺 今一人なんだ。 よかったら会えない?」



見知らぬ土地で一人よりも、土地勘のある育美ちゃんが一緒の方が安心だ。

そう思ったから電話をかけた。

……っていうのは建前で。


本音は……ただ普通に育美ちゃんと会いたかったから。

明るい笑顔をもう一度見たい。 声が聞きたい。

そう思ったんだ。



『嘘っ…本当にっ!? ……ちょっと待っててっ、すぐ行くっ!! 1分で行くっ!!』

「え、1分って…メチャクチャ早くない?」

『近くのコンビニに居たのっ!! お昼ご飯を選んでたところでっ……!! あぁっ見つけたっ!! 和真くーんっ!!』



耳元と、少し離れた向こう側から同時に声が聞こえる。

周りの視線なんか一切気にしない元気いっぱいの育美ちゃんが、俺に向かってブンブンと手を振った。

だから俺も大きく手を振り返す。


二人で過ごす時間は、きっと楽しいものになる。


育美ちゃんの満面の笑みは、それを予感させるには十分過ぎるものだった。