「ぼ、暴力事件とかになったら、どうしよう……」

「まぁそんなのは滅多に起こらないだろうけど、さすがにこのまま放ってはおけねぇな」

「……和真のところに行くの?」


「うん。 美麗はここで待っ……」

「え、普通に行きますけど。 むしろ置いていかれるとか絶対 嫌だからねっ?」

「……ははっ、オーケー行こう。 ただし、ヤバい時は俺が対処するから、お前は近づきすぎるなよ?」


「うん」



本当は行きたくない。

「唐草 美麗」のフォロワーなんかと会いたくない。


でも私は、和真の姉だ。

いざという時に弟を守れるのは、きっと姉である私だけ……。

私に出来ることなんて何もないかもしれないけれど、それでも一人で待つなんて絶対に嫌。



「じゃあ、まずは和真と別れた場所にまで戻ってみよう。 ……疲れは平気?」

「全然平気っ」

「……っし、行くかっ」



レジャーシートを片付けて、気合いを入れながらカバンを持つ。

和真が今どこに居るかはわからない。

だけど私たちは歩き出す。


これから先、危険なことが起こるかもしれないけれど……それでも弟を一人になんてしておけない。



「……電話に出てよ、馬鹿和真っ……」



歩きながら電話をかけるけど、コール音が虚しく こだまするだけだった。

和真は電話に出ない。

私がかけても、マルがかけても…だ。


そして……当然のように和真から電話がかかってくることもなかった。