風呂に入って、冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップへと流し入れる。

注ぎ終えた麦茶の容器を、開けたままだった冷蔵庫へ戻して、渇いた喉を潤そうとコップに手を伸ばしたとき。


すっかり部屋着として愛用している中学時代のジャージのポケットで、小さくバイブが鳴った。



コップを取りに行ったはずの手は、そのままジャージのポケットへと流れて


スマホを取り出して画面に表示された名前にドキッとする。



【放課後、涼くんに髪のこと褒めてもらえたよ。可愛いって言ってくれた(*^_^*)これも頼くんのおかげだね!ありがとう】


俺へと、まっすぐに述べられたお礼の言葉。


どこまでも能天気で、素直で、純粋に涼が好きな花にズシッと胸の辺りが重くなった。



「可愛いとか……。真に受けんな、バカ」



【天然に振り回されるべからず。
涼の言動、行動、とにかく全部真に受けんな】



涼の、天然で、誰にだって発動する甘い言葉に、いちいち花がドキドキするのは嫌だって。


そんな自分勝手な司令を送り付けて、



【努力いたしまする……】


直ぐに帰ってきた花からの返事に、今度はやけに冷静になる。


あーー!……っくそ。

余裕ねぇな、俺。