「俺、拗ねるよ。いいの?」
「……っ」


かわいい言い方をして、私を惑わせてくる彼。
ギャップにやられてしまいそうだ。


「だって…」
「拗ねたら白野さんに何するかわからないよ」


今度は軽く脅してくる。
これはもう彼の言う事を聞くしかなさそうだ。


ドキドキする気持ちを必死で抑え、諦めてゆっくりと彼のほうを向く。


すぐに神田くんと目が合った。

真面目な姿の神田くんは度が入っていないメガネをかけ、制服もきちんと来こなしている。


そんな彼は学校外になると、とても危険な姿へと変わるのだ。


「やっとこっち、見てくれた。
おはよう白野さん」

優しく微笑む彼。
それだけで顔が熱くなり、すぐ彼から目を逸らしてしまう。


やっぱり無理だ。
今の私は神田くんを見つめることだなんてできない。

昨日のことが何度も脳内再生される。
原因はそのせいだってわかっているけれど。


「どうしてすぐ照れるの?」
「そ、れは……」

「ちゃんと答えてくれないと伝わらないよ」


優しく言って本音を聞き出そうとしてくる彼。
本当に慣れているのがわかる。


「恥ずかしくて、見れないの」

神田くんと目が合うだけで、昨日のことを全て思い出してしまうから。


「……ふっ、かわいい。
それって原因は昨日のこと?」

「……っ」


意地悪、本当に意地悪。
わかっているくせに、わざわざ聞いてきて。

さらに恥ずかしくなるに決まっている。
小さく笑って、余裕そうな彼。


「当たりだ。じゃあ練習しよう」
「れん、しゅう…?」

「そう。俺と目が合わせられるように。
やっぱり白野さんに避けられるのは辛いから」


いったいどうやって練習するのかわからないでいると、電車が来てしまい聞きそびれてしまう。