「…悲劇のヒロインさん。いつまでここにいるつもり?
あ、この場合ヒロインじゃなくて悪役か」


雨の中、唐突に声をかけられ辺りを見渡す。

狭い屋上、全体を見渡してもそこには誰もいなくて、空耳だったのかと目線を下に戻した。





「勘違いもここまでくると甚だしいね。まあ、あれはあの男もどうかと思うけど」





…やっぱり空耳じゃない。

もう一度辺りを見渡すと、扉の前に人影があることに気づいた。

涙でぼやけてうまく見れないけれど
濡れないように屋根の下にいる彼は、片手で携帯をいじりつつ、冷ややかな目で私を見ていた。




「誰、ですか?」

「自分で調べて。…まあ俺は知ってるけどね。君の名前」

なにこの人。態度悪い…。



「なんなんですか。私を笑いに来たんですか…っ」



さっきの出来事を思い出して、目の前の景色が歪んでいく。

全部、全部、私の勘違いだった。

ずっと龍と付き合ってると思い込んでた。

でも実際龍と付き合っていたのは佐田さんだった。




自分が、イタイ。
すごく、いたい。





「はあ?そんな面倒くさいことするわけないじゃん。
たまたま来たら噂の君がいて、面白そうだなと思って見てただけ」