「だって、あいつ、お前とひとつ屋根の下で暮らしてるんだろ?
 そんな状況で正気を保てるとは思えん」
と陽太は本気で心配し始めた。

「いやあの、買いかぶりすぎですよ。
 別に私、モテませんし」
と深月は赤くなりながらも言ったが、陽太は、

「買いかぶってはいない。
 実際、モテてるじゃないか。

 俺と清春に。

 あと、もしかしたら――」
と言いかけたので、

 もしかしたら……?
と陽太の顔を見つめてみたが、陽太は何故か、そこで沈黙した。

「いや、拷問されても言うつもりはない」
と言い出す。

「敵に塩を送ることになったら嫌だからな」

 いや、しませんけどね、拷問……と思ったとき、

「ところで、それはなんだ?」
と陽太が深月の手許を見て訊いてきた。

「ああ、手提げ金庫です」

 深月はまだビニール袋に包まれたままの新品の手提げ金庫を見下ろし、言った。

「そうじゃない。
 何故、手提げ金庫を持っているのかと訊いてるんだ」