「昨夜はお前のおかげでよく眠れたよ」

 深月が支社長室に行くと、笑顔の陽太がそう言ってきた。

「そうですか。
 よかったです」
と言いながら、深月は、

 私はかえって眠れなくなりましたけどね、と思っていた。

 よく考えたら、これだけのイケメンで、しかも御曹司。

 今まで誰とも付き合ったことがないはずもない。

 ……いや、だからどうってわけでもないですけどね。

 ええ、本当に。

 ただ、昨夜聞いたみたいな、どきりとするようなセリフを他の女にも言ってやがったのかな~と思うと、ちょっとイラッと来るだけです、
と思う深月に、陽太が訊いてくる。

「お前、兄貴とはふしだらなことはしてないだろうな」

「いや、だから、兄なんで……」
と言ったが、

「わからないじゃないか」
と陽太は言う。