「マトレ通りは……」

 館でさりげなくメイドに聞いていた場所をたどっていく。なにせ、自分の足でここへくるのは初めてなのだ。右も左もわからないローズは、手探りで進むしかない。

「あ、ごめんなさい」

 きょろきょろと通りを探していたローズは、若い男とぶつかってしまう。


「いや、大丈夫かい、お嬢さん」

「はい、申し訳ありません」

「ここらじゃ見ない顔だね。祭りを見に来たのか?」

 ローズがぶつかった男は、にこにこと笑顔で言った。口調からして、地元の人間なのだろう。

「ええ、そうなの。マトレ通りで待ち合わせをしているのだけれど、迷ってしまって」