けれどそれでお兄ちゃんが諦めてくれるわけがなく。


「なあなあ未央、お願いだから休もう。な?
せっかく平日で親がいない、ふたりきりだって言うのに」

「お兄ちゃんは友達と遊びに行ったりしないの?」
「友達より未央が優先だから」


私が優先って…お兄ちゃんのことだ、多くの友達に誘われていることだろう。


「たまには遊んだらいいのに」
「未央が家に帰ってくる時間を逃したくないから嫌だ」

「そんな理由で遊ばないなんて…」


やっぱりお兄ちゃんはずれている。
考え方とか色々と。

本当に容姿がいいからもったいないという気持ちでしかない。


そんなお兄ちゃんに呆れつつ、一階に降り終わったのとちょうど同じタイミングでスマホが振動する。

スカートのポケットからスマホを取り出し、確認すると神田くんからのメッセージで。


また彼から返信がきたのだ。

それだけでも嬉しいというのに、内容がさらに私を喜ばせて。


寂しいと思っているのは私だけじゃないようで、神田くんも会えなくて寂しいと言ってくれたのだ。

彼も同じ気持ちだと考えただけでも嬉しくて、つい頬が緩んでいたら───


「“神田くん”……?」

お兄ちゃんの声が耳に届き、はっと我に返る。
完全に油断していた。


慌ててスマホの電源を切ってポケットに直す。

何事もないように先を歩き、お母さんが用意してくれたご飯を食べるため、リビングにあるテーブルに向かおうとしたけれど───


「……きゃっ」

すごく強い力でお兄ちゃんに肩を掴まれ、振り向かされてしまう。