「……いや、ひとりじゃないよ。
白野さんといる」


突然私の名前を口にされたからドキッとする。

神田くんは私を見つめながら優しく微笑み、そして頭に手のひらを置かれる。


かと思えば、その手はだんだん下へとおりていき。
今度は頬を指で撫でられた。


電話をしながらそんな風に触れられて、何故だか“イケナイこと”をしている感覚に陥る。


それからもふたりのやりとりは電話越しで行われる中、私は神田くんに触れられていて。

胸の高鳴りが止まない状態だったけれど、必死で恥ずかしさに耐えていた。


「じゃあ昨日お世話になったことだし、今日の夜にでも向かおうか」


ただじっと神田くんが電話を終えるのを待っていると、彼の纏う雰囲気が変わった気がした。

どちらかといえば、危ない雰囲気を醸し出している。



「うん、そうだね。もう向こうに逃げ場なんてないから、こちらの意見を呑んでもらうだけだよ」


どんな内容を話しているのか、私にはわからなかったけれど───



今の神田くんは、闇を生きる“若頭”としての神田くんに見えた。