「もう…止めてよ。これ以上、関わらないで。」

「なんで止めなきゃいけないの?いい加減、素直になったら?」

「えっ…?」

「俺は由香さんをずっと見てた。いつか俺のものにしたい、自然とそう思ってた。嘘偽りない思いだよ。由香さんは?俺の事、嫌い?目の前から直ぐに消えてほしい?」

そう言いながらもさらに顔を近付けてくる後輩を直視出来ず、顔を背ける。

「消えてほしいだなんて、そんな…」

ズルい。

この子は知っている。

どういう言葉をどういう風に言えば効果的なのか。

そして、私の心が今、どれだけ熱を帯びてきているかを。

けれど、言葉で言うのは簡単だけど素直に何もかもさらけ出す事が出来るほど私は若くもなければ可愛げもない。

それでも佐々木くんは私を求めてくれる。

「全部見せてよ。あの時、あんなにも素直に俺に抱かれたじゃん。あの時の由香さんすげぇ、可愛かった。」

ほら、まただ。

きっと、確信犯。

私がその目に弱いことを知っててわざとする。

あの夜と同じ、切なげに私の顔を覗き込む。

まるでーー

捨てられた子犬みたいに。

ううん、違うか。

確信犯は私だ。

あの時に知ってしまった佐々木くんのこの視線。

この視線が私の奥深くを熱くする。

ズルいのは私だ。

本当はもう答えは出ているのに。

いつまでも素直になれず拗らせている。