「二人? でも吹いていたのはお一人よね。以前にも同じようなことがあって、どなたなのかと気になっているの。よかったら、教えてもらえないかしら」

「以前にも? それは、奥様がこちらでハープをお弾きになっていた時の事でしょうか?」

「ええ、そうよ」

 ローズの言葉を聞いてしばらく考えていたソフィーは、顔をあげるとたおやかに微笑んだ。

「吹き手の事に関しては、おそらく、奥様も近いうちにおわかりになると思います。決してあやしい者の仕業ではございませんのでご安心ください。では、お部屋へ戻りましょう」

 それ以上はソフィーは何も言わず、ローズをとっとと部屋へ押し込んで戻ってしまった。結局、ローズにとって、トラヴェルソの主はわからないままだった。