「…佐久間、くん、ちょっとだけ離して」

やっぱり神田くんを別の苗字で呼ぶのは違和感があって慣れないけれど。

戸惑いながらも彼のことを偽名で呼んだ。


「え、どうして?」
「いいから、早く」


私が急かしたからだろうか。
素直に彼が私を離してくれた。

今度こそ解放されたため、神田くんのほうに体を向ける。


「……白野さん?」

戸惑う神田くんを他所に、絆創膏を傷ができている彼の頬に貼った。


「はい、できた」
「できた…?」

「怪我、してたから。絆創膏貼らないとなかなか治らないし、そこに菌が入ったら悪化しちゃうもん」


キャラクターなどのかわいいデザインではなく、シンプルな絆創膏だったため、これなら彼も安心して使ってくれるだろうと思った。


「……あー、やっぱりダメだ」
「え…」
「白野さんは慣れないことばかりする」


ただ絆創膏を貼っただけなのに。
また彼は私を包み込むようにして抱きしめた。