ケータイ小説 野いちご

年下の生意気な奴に懐かれました。


「だから、名前。…教えて?」


名前を知りたいだけだったら、こんなことする必要ないんじゃないかなって思っているのに口には出せない弱虫が情けなく感じる。

わざわざ壁ドンしてまで通せんぼする意味あるのだろうかと。

ただ、無駄にドキドキしてしまうだけというか、この状況のおかげで頭が上手く回転してくれないというのもある。


だから、つまり彼のせいでもある。

わたしは、たまたまお昼休みにこの場所を通っただけの被害者なのだ。

だから今すぐ解放してほしい。
この壁ドンからも、この空気からも。


「…先輩、名前教えてよ」

「———っ、」

耳元で囁く甘い声。

そんな声、どこから出しているんだと問いただしてしまいたくなるくらい甘ったるいそれは、目の前の彼が言ってるとは思えないくらい。

でも、そんなこと言ってられないくらい精神状態は限界を達していて、一刻も早くこの状況から解放されたかった。

「…言うから。とりあえず、この手をどけて」

そう言っても目の前の彼は一言も喋らず、両手を退けることもせずに、未だにこの状況から抜け出せない。

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