「ここじゃなくても遠くの街や遺跡。山や海だって、どこにだって連れて行ける」

「……」

「きっと驚くぞ! 特に海にいる鯨なんて見たら絶対にな」
 
この世界にはまだオフィーリアの知らない物がたくさんある。だから俺は彼女に知らない物を見せてあげたいと思った。今やるべき事が終わったら、その時は彼女を連れて旅に出よう。
 
そうだな……。まずは海を見せてあげたい。

「……そうだね。もしその時が来たら……お願いするよ」

「ああ」
 
俺はこのとき気づくべきだったんだ。あの時オフィーリアが見せた悲しい表情の理由に。
 
もっと早くに気がついていたのなら、オフィーリアは今でも俺の隣で笑っていたかもしれないのに――