「おはよう。遅くまで寝すぎよ」

「えっ?」
 
オフィーリアの言葉を疑問に持った俺は、部屋にある時計を見て声を上げた。

「八時?! 流石に早すぎだろ!」
 
待て! 確かに俺は今八時に起床した。

一般の人からしたらそろそろ起きろよ! と思うところだろう。

しかし俺にとっての起床時間とは朝の十時の事を言うんだ。まだ二時間も寝れるじゃないか!

「あのね……私はもう六時には起きるの。私より二時間遅く起こしてあげたんだから少しは感謝しなさいよ」

「か、感謝しろって言ってもな! 俺はいつも十時に起きるんだよ! まだ二時間も睡眠時間が残っているじゃないか!」
 
あと二時間も俺の快適な睡眠ライフが待っていると言うのにこいつは……! 

朝六時に起床とか真面目か?! 真面目なのか!?

「はあ……。あなたもしかしてずっと今日まで、そんなぐうたらな生活を送っていたの?」

「ぐ、ぐうたら……だと!」

彼女の【ぐうたら】と言う言葉に俺のこめかみが上がる。

「ぐうたらじゃない? 朝十時に起きるとかもう大人として有り得ないわよ」

オフィーリアは自分の言っている事が正しいと言わんばかりに、胸の前で腕を組んで俺を見下ろしてくる。

その姿を見て更にカチンと来た俺は立ち上がり彼女の前まで歩いて行く。

「俺からしたら朝六時に起きるという、お前のそのクソ真面目な思考が有り得ないけどな」
 
そこで俺たちは互いに睨み合う。
 
昨日は少し可愛いと思っていたけど、とんだクソ真面目なお嬢様だ。

可愛い顔しているくせに毒は吐くし、少し常識知らずのところがあるのに、生活習慣はきっちり守るタイプで――

「でも私を手伝うと言ったのは、あなたからじゃない」

「それはそうだけど」
 
それとこれは別だ。

俺は自分の睡眠時間を削ってまで捜査する気はない。
 
しかしそんなことを今この場で言ったら、彼女の腰から下げられている魔剣レーツェルで何をされるか分かったもんじゃない。