「思い出した?」

「あ、ああ……」

俺はミリィから目を逸らす。

うん。この話しは蒸し返されたくないな。

てゆか何で自分はあんなこと言ったんだ? 何かノリで適当に言ったような気が……。

「そんなことばかり言ってたら、この先一人身なのは確実ね」

ミリィの【一人身】と言う言葉が岩石になって頭の上に落ちてきた。

俺は青い顔をして助けを求めるように彼女に手を伸ばす。

「ひ、一人身って……そんな寂しいこと言うなよ?」

「じゃあ一人の女性を好きになれるように頑張らないとね」

ミリィは満面の笑みを浮かべると俺の伸ばしかける手を払い除け、金髪の髪を揺らし背を向けて先に歩き出した。

「そ、そうだな……」
 
やべぇ……さっきのミリィの笑顔めちゃくちゃ怖かった。

いや、その前に手を払うことないだろ!
 
ミリィの言う通りこの先、一人身として生涯を終える可能性はなくはない。
 
そう思いながら俺は未来の自分を想像する。そして背中に寒い物を感じ頭を左右に振って考える事をやめた。

「そ、それだけは何としても阻止しないと!」
 
俺もミリィの後を追うように歩き出し考える。

「でも、好きでもない子と付き合うのはちょっと」
 
仮に付き合ったとして結婚の話が挙がったとしよう。そのとき俺は好きでもない子と、生涯を共にしたいと思うだろうか? 

答えはもちろんノーだ。
 
結婚というものは、お互いを心から深く愛し合っている者たちが挙げる生涯の契みたいなものだ。

そんな人生で一番大切な契を、愛し合っていない人と交わすだなんて俺には無理だ。
 
だから俺は心から愛し合った人と一生を添い遂げたいと思う。今直ぐ好きな子を決めるなんて難しい話だ。

「まあ……一生出来ない可能性もあるけどな」

そう小さく呟き光の失った目を浮かべた時、先を歩いていた彼女の声が耳に届いた。。

「ほら、街に着いたよ」
 
ミリィのその一言で俺は目を向いて街を眺めた。
 
大都市ルークス――医療技術や工業が盛んな大都市であり、この辺りでは数少ない大都市の一つだ。