「ごめん、やっぱり忘れてください」

もうめちゃくちゃだったため、結局なかったことにしようと思ったけれど。


「白野さん、ありがとう」

彼は嬉しそうに笑った。
私の言葉を聞いて、明らかに嬉しそうで。


「どうしよう、今ならなんでもできそうな気がする」
「え……」

「大丈夫。
俺は白野さんがいる限り、どこかに行ったりしないよ」


私を安心させるように。
優しく声をかけられる。


「本当…?」

神田くんは、容易に関われないほど遠い存在の人。


そう思っていたのに、彼と関わる度。
私の心は揺らいでしまう。

まだほんの少しの時間しか経っていないのに、もう彼の言葉に期待を抱いてしまう自分がいた。


神田くんとこれからも関われるのだと。


「白野さん。スマホ、持ってる?」
「え…あ、うん……」


確認のため、本当かどうか聞いたのだけれど。
彼は話を少しずらした。