それは、肌を撫でる風がじんわりと熱を運ぶようになってきた5月末。

私が図書委員の係を受け持つ、水曜の放課後のこと。



「傘、持ってたっけ……」


図書室の窓からどんよりと暗い空を見上げ、私は思わずぽつりとこぼした。

空からは、細い矢のように雨がしとしと降り注いでいる。


元々水曜は活動がないサッカー部はもちろん、野球部や見当たらず、グラウンドはガランとして静かだ。


施錠時間の6時までに止むといいのだけれど……。

そんなことを考えながら、再びカウンターへ戻ろうとした時。

突然、図書室のドアが開いた。


「こんにちは。雨宿り、していってもいい?」


唐突に図書室に響く、凜としたとおる声。


「どうぞ」


そう言いながら、入ってきたその人物の方へ視線をやった私は、思わず固まった。


「──あ」


だって、それが由良くんだったのだから。