それもこれも、弥一が無駄にモテるせいだ。
無駄に知名度が高いせいだ。

そんな弥一が”元カノと別れてまで幼なじみを追いかけてる”って噂まで流れ始めて


いよいよ学校に来るのも憂鬱になった。

とはいえ、私の中ではあの日。
あの時、弥一に告げた言葉で全てを終わらせたつもり。もう弥一に振り回されたりしない。


……私は、


「あ、佐倉だ」



───ドキッ



「芽唯のこと迎えに来たんじゃない?そろそろ休憩行っておいで」


私は、佐倉を大事にしたいって思ってるから。


”ほれほれ”と私の背中を押す萌菜に、静かに頷いて教室の入口でこっちを見ながら手招きする佐倉へと駆け寄る。


佐倉を見ると、安心する。
好きな人にはどんなときもドキドキするもんなのかな?安心するって……好きとは違うのかな。



「回れそ?」

「あ、うん!どこから行こっか」


教室を出た私は、空元気が発動する。
とにかく明るく、とにかく笑顔で、佐倉のことだけ考えたいから。


「繋ぐ?」

「え……」

「手、繋ぐ?」


歩き出した佐倉の隣に並んで歩き出せば、チラッと私を見た佐倉がそんなことを言う。